2020年度3月期のJAL決算がでてきましたので、早速内容を解説していきたいと思います。
JALが赤字って聞いたけど内容が良く分からない
今後、航空需要はどうなるの?
航空関連株は買っても大丈夫?
そういった疑問にお答えしていきます。
結論としては、JALは財務的にはまだ余裕があると思っています。え?すごい赤字だったんじゃないの?と思うかもしれません。売上は減少、数千億円の赤字で、確かに苦難を強いられている状況です。コロナが終息する兆しもまだ見えなので、先行きも不透明です。
ですが、私は、この困難は乗り越えられる(それだけの財務蓄積はある)と考えています。理由は記事で詳しく説明しているので、読んでみてください。
なお、決算書を読みたいという方には以下の記事もおすすめなのであわせてご覧ください。
こちらは、決算書を読めるようになるためのおすすめ本のリストです(実際に読んでよかった本をまとめています)。
では、早速みていきましょう。
JAL:2020年度決算の主要数値
売上高は4,812億円(前年対比34%)、経常利益は▲2,866億円でした。再上場後に経常赤字を計上したのは、今期が初となります。
非常に大きな赤字額ですが、ANAホールディングスが計上した▲4,513億円の経常赤字と比べれば、傷口は浅く済んだ、という見方もできるかもしれません。
ANAホールディングスの決算分析に関しては以下の記事をご覧ください。
売上がこれだけ下がっているので、当然コスト削減が肝になります。以下の3つの取り組みをされているようです。
- 基材数の適正化
- 生産性向上
- SMART AIRPORTの展開による効率化・省人化システムを活用した費用効率化、等
機体数は以下のように推移しています。
2020年3月 | 2021年3月 | 2021年3月 (退役済み機材除く) | |
機体数 | 241 | 237 | 218 |
退役済みで売却が完了していない機材があるようなので、売却が進んでいくのは2021年4月以降となるのでしょう。
JAL:2021年度決算見込
現在は未定となっています。決算資料のコメントでは以下のように記されています。
2022年3月期の通期業績予想は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から主に国際旅客需要の回復
日本航空株式会社2021年3月期決算説明会 p5より引用
を合理的に見積もることが困難なため、未定とする
私としては、黒字を目指しますと言われるよりも信用できる言葉に思います。ANAは黒字を目指すと言っていて素晴らしい目標ですので否定しません。ですが、コロナの今後の行方はコントロールできないので、分からないというのも一つの答えだと思います。
なお、以下は黒字化を目指すにあたって、2019年比でどのくらい需要回復したらよいかを示した図です。
仮に国際線需要が20%程度だとすると、国内線需要が90%以上に戻らない限りは黒字化は難しいという予想です。2021年5月現在、世界では変異株が流行し、日本国内でも感染拡大により緊急事態宣言が発令されています。
この状況が長引くようであれば、2021年度の黒字は難しいオーダーと言えるかもしれません。
JALの財務状況は?赤字に耐えられる体力はあるか?
財務データをいかに抜粋しています。
2019年度期末 | 2020年度期末 | 参考:ANA 2020年度期末 | |
現金及び預金 | 3,291 | 4,083 | 4,647 |
有利子負債 | 2,774 | 5,151 | 16,554 |
自己資本 | 10,142 | 9,474 | 10,072 |
自己資本比率 | 51.2% | 45% | 31.4% |
D/Eレシオ | 0.3x | 0.5x | 1.6x |
まず、現金に関しては心配することないレベルです。
借入金を増やした代わりに、手元資金に充当されました。現在のキャッシュバーンは100~150億円/月とのことですが、これだけ現預金があれば当座は凌げるでしょう。
D/Eレシオ(有利子負債)は、0.5程度に増えていますが、ANAのD/Eレシオは1.6xに達しており、ANAと比べるとはるかに財務体質は健全と言えます。
JAL株の今後の推移は?
今後の動きは分からないのですが、決算後の値動きを見るとマーケットは今回の決算を否定的には受け止めていないように思います。
5月7日の終値は2,324円。前日終値より微増し、大きく下落することはありませんでした。買い時かどうかはマーケット次第なので分かりませんので、株式投資は自己責任でお願いします。
株式投資を始めたい、興味がある、と言う方は以下の記事を参考にしてみてください。ANAなどの株も、小額から購入することができます。
決算書を読んでみたいという方は、おすすめ本をまとめてますのでご覧ください。
まとめ:コロナ前の世界にいつ戻るのかが鍵
まとめです。
- コロナで航空需要が低迷する中でコストダウンを進めて赤字幅を2,000億円程度に抑えたのは御の字
- 借入金を増やしており、現預金が十分にあるのですぐに倒産する危険はない
- ANAと比べれば有利子負債比率は低く、財務は健全
- 航空需要が戻るかどうかはコロナ次第。ワクチン接種が進んだからといって航空需要が戻る保証はない。
2021年でどうなるかはコロナ次第かと思います。
アメリカなどワクチン接種が進んでいる国では出口が見えてきてるような報道も多いですが、日本を見ていると終息の気配は見えません。それどころか、インドなどでは変異株が猛威を振るっており、感染は収束するどころは加速度的に拡大しています。
コロナ前の日常が戻ってきて、ANAと同様に、JALにも早く回復してもらうことを祈っています。財務的により強固になって、さらなる成長を遂げてもらいたいです。
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